趙遠舟(ちょうえんしゅう) は絶体絶命の窮地に立たされ、これまで仲間と共に歩んできた道のりの裏に隠された、恐るべき計画の全貌が明らかになります。信じていた仲間の不可解な行動の裏には、悲しい秘密が隠されていました。一方、都では丞相が惨殺される奇怪な事件が発生し、なぜか文瀟(ぶんしょう)が犯人として追われる身となってしまいます。緝妖司を揺るがす二つの大きな事件。点と点だった謎が繋がり始め、物語は核心へと向けて大きく動き出します。

「大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~」あらすじネタバレ20話

物語は、白玖(はくきゅう)のそばに現れる衝撃的なシーンから幕を開けます。裴思婧(はいしせい)は、かつて昆仑門で白玖(はくきゅう)と偶然会ったことを思い出しますが、今となってはそれが偶然などではなかったと気づかされます。温宗瑜(おんそうゆ)は勝ち誇ったように、趙遠舟(ちょうえんしゅう) の五感をいかにして奪ってきたかを語り始めます。思南水鎮で配られた清瘟敗毒丸が味覚を、趙遠舟(ちょうえんしゅう) に護身用として渡した渙霊散が嗅覚を、地下密室に入る際に目を覆ったのが視覚を、そして槐江谷で配った耳栓が聴覚を封じるためのものだったのです。白玖(はくきゅう)は、自分が崇武営の内応であったことをあっさりと認めます。

温宗瑜(おんそうゆ)の計画は、我々の想像をはるかに超えて巧妙でした。趙遠舟(ちょうえんしゅう) が初めて人間界に現れた時から監視し、先遣隊のメンバーを選んだのも彼自身。白玖が任務を遂行しやすいように、あえて裴思婧(はいしせい)を崇武営から追い出し、緝妖司に加入させたのです。弟を亡くした裴思婧(はいしせい)が、年齢の近い白玖に弟の面影を重ねるように仕向けることまで計算ずくでした。さらに、卓翼宸(たくよくしん)でさえ、白玖が失敗した際の保険として、趙遠舟を殺せる唯一の武器雲光剣の持ち主として選ばれていたのです。すべては温宗瑜の描いた筋書き通り。裴思婧は、自分の一歩一歩がすべて仕組まれていたことを知り、愕然とします。

そして明かされる温宗瑜の真の目的。彼が欲していたのは趙遠舟の内丹ではなく、8年前に趙遠舟が偶然体内に吸収してしまった、この世に最後の一本とされる不燼木(ふじんぼく)でした。残るは触覚のみ。温宗瑜が白玖に銀針で趙遠舟を刺すよう命じたその時、裴思婧が機転を利かせ山神(さんしん)寸境を使い、二人はかろうじて地牢から脱出します。

一方、都では衝撃的な事件が発生。丞相の馬車から大量の血が流れ出し、中には裸で血まみれの文瀟(ぶんしょう)と丞相の亡骸が…。しかし、本物の文瀟(ぶんしょう)はその頃、緝妖司で卓翼宸(たくよくしん)と神木探しの相談をしていました。偽物の出現により、文瀟(ぶんしょう)は殺人犯としてお尋ね者になってしまいます。

卓翼宸(たくよくしん)は丞相の遺体や馬車に残された硫黄の匂いから、犯人が傲因(ごういん)という妖怪ではないかと推測します。傲因は人の脳や心を好んで食らう凶悪な妖怪です。仲間たちが文瀟の無実を証明し、傲因を追うために奔走する中、ついに白玖と対峙します。

卓翼宸はまだ白玖の裏切りを信じられずにいましたが、白玖はついに重い口を開きます。彼が温宗瑜に協力したのは、すべては病気の母親を治すためでした。8年前の血の月の夜、母が部屋で妖樹に体を蝕まれるのを目撃した白玖。父は母を妖邪になったとみなし、部屋を固く閉ざしてしまったのです。医術を学ぶうちに温宗瑜と出会い、母親を完治させるという言葉を信じて、彼の言いなりになっていたのでした。

しかし、ここでさらなる衝撃の事実が。白玖の父・司徒(しと)鳴(しとめい)が、すべての真相を語ります。白玖の母は、もともと半神半妖の血を引く神木白顔(はくがん)でした。8年前に白澤令が失われた際に力を失い、神識をなくして槐樹の姿でかろうじて命を繋いでいたのです。白玖が母だと思っていた病人は、実は神木そのものだったのです。真実を知り、自分を心から思ってくれていた仲間たちを裏切ってしまったことに涙する白玖。卓翼宸はそんな彼を知って改めればいいと慰め、仲間たちは再び一つになるのでした。

『大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~』第20話の感想

今回は、これまでの物語を根底から覆すような事実が次々と明らかになり、息つく暇もないほど濃密な一話でした。特に、純粋で心優しい少年と信じていた白玖の裏切りと、その背景にあった母親を想う悲痛な動機には胸を締め付けられます。彼の行動は許されるものではありませんが、その苦悩を知ってしまうと、単純に悪と断罪できないのがこの物語の奥深さだと感じます。温宗瑜の底知れぬ策略、そして白玖の母親の正体という、予想をはるかに超えた展開にはただただ圧倒されました。それぞれのキャラクターが抱える宿命の重さが浮き彫りになり、物語に一層の深みを与えています。悲しい真実を乗り越え、再び結束しようとする緝妖司の面々の絆に、かすかな光を見出した回でした。

つづく