昏睡から目覚めた緝妖司の統領・卓翼宸(たくよくしん)は、まるで別人のように豹変し、仲間を傷つけ街へと姿を消してしまう。時を同じくして街で傷害事件が発生し、その犯人として卓翼宸に疑いの目が向けられる。

民衆からの激しい非難を浴び、緝妖司は窮地に立たされることに。仲間たちは彼の無実を信じようとするが、状況は悪化の一途をたどる。陰で糸を引く謎の存在がちらつくなか、卓翼宸は自らの過酷な運命と向き合い、大きな決断を迫られる。信頼と裏切りが交錯する、緊迫のエピソード。

「大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~」あらすじネタバレ25話

事の発端は、昏睡状態から目覚めた卓翼宸(たくよくしん)の豹変でした。目覚めるやいなや、彼は文瀟(ぶんしょう)の喉に手をかけ、その場にいた趙遠舟(ちょうえんしゅう) が慌てて止めに入るも、なんと趙遠舟(ちょうえんしゅう) の一字訣が効かない!妖力に完全に支配された卓翼宸(たくよくしん)は、止めに入った英磊(えいらい)をも容赦なく投げ飛ばし、緝妖司から姿を消してしまいます。

街に出た卓翼宸は、声をかけてきた更夫を殴り倒してしまいます。その後、力の尽きたように倒れているところを趙遠舟に発見されますが、本人は何も覚えていません。自分が仲間や無関係の人々を傷つけたと知り、卓翼宸は自責の念に駆られます。彼は、これ以上被害を出さないために、自ら地牢に入ることを裴思婧(はいしせい)に願い出るのでした。

しかし、事態はこれで収まりません。翌日、卓翼宸の凶行を目撃した男が民衆を扇動し、緝妖司の前に押しかけてきます。人殺しを引き渡せ!と叫ぶ彼らに、裴思婧(はいしせい)と英磊は野菜を投げつけられ、なすすべもありません。

実は、更夫を襲ったのは卓翼宸ではありませんでした。趙遠舟が詳しく調べたところ、犯人の首には卓翼宸が妖化した際に出るはずの青い氷紋がなかったことが判明します。そう、すべては傲因(ごういん)が卓翼宸の姿を借りて行った凶行だったのです。

真実を知り、文瀟(ぶんしょう)と裴思婧は地牢へ卓翼宸を迎えに行きます。しかし、傲因がまだ捕まっていない以上、彼を解放すれば緝妖司の信用は失墜してしまう…。そこで一行は、傲因をおびき出すため、天香閣へとおとり捜査に向かいます。

黒い布で顔を隠していても、卓翼宸の正体はすぐに民衆にバレてしまいます。人殺し!という罵声が飛び交い、卵を投げつけられる始末…。かつて英雄として迎えられた彼が、今は憎悪の対象となっている。その理不尽な光景に、卓翼宸の心は善悪の区別もつかない人間への深い失望に沈んでいくのでした。

そして帰り道、ついに黒幕である離崙(りろん)が姿を現します。すべては卓翼宸を孤立させ、自分と同じ苦しみを味合わせるための離崙(りろん)の策略だったのです。人間にも妖にもなれない、帰る場所のない存在になれとそそのかす離崙に対し、卓翼宸は怒りを抑え、彼を川に突き飛ばします。

民衆の醜さを目の当たりにしても、彼は悪に与しないことを選びました。そして、罪の記憶なく人々から責められる趙遠舟の苦しみを、今、心の底から理解したのでした。

『大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~』第25話の感想

今回のエピソードは、人間の心の脆さと、それに翻弄される主人公たちの姿が克明に描かれており、非常に見応えがありました。特に印象的だったのは、英雄から一転して民衆の憎悪の的となる卓翼宸の姿です。真実を知らない人々の集団心理が、いかに容易に個人を断罪し、追い詰めていくかという恐ろしさを感じさせられました。

しかし、そんな絶望的な状況下でこそ、彼の精神的な強さが際立ちます。離崙の巧妙な罠と甘い誘惑に屈せず、人間としての尊厳を保とうとする姿には胸を打たれました。また、この一件を通して、これまで対立することもあった趙遠舟の苦悩を真に理解し、二人の間に確かな絆が生まれた瞬間は、本作のテーマである償いと救済に深みを与える重要な場面だったと思います。物語の核心に迫る、重厚な人間ドラマが展開された回でした。

つづく