仲間である白玖(はくきゅう)を救うため、そして折れた雲光剣を修復するため、趙遠舟(ちょうえんしゅう) たち緝妖隊一行は、氷夷(ひょう い)族の禁地崎巻洞へと向かいます。そこは、どんな願いも叶えるという宝が眠る一方、一度入れば生きては戻れないと噂される伝説の場所でした。道中、離崙(りろん)たちの襲撃をかわしながら、ついに禁地の奥へとたどり着いた彼ら。しかし、そこで待ち受けていたのは、あまりにも過酷で非情な選択でした。仲間を、そして愛する人を守るため、彼らが下す決断とは…。固い絆で結ばれたはずの彼らに、運命は最大の試練を与えます。

「大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~」あらすじネタバレ26話

憎しみを超えた絆、そして新たな旅立ち

物語は、卓翼宸(たくよくしん)にかけられた殺人の濡れ衣を、甄枚(しん ばい)が晴らすところから始まります。彼女が捕らえた犯人の傲因(ごういん)は、実は温宗瑜(おんそうゆ)が作り出した妖化人でした。温宗瑜の真の狙いは、雲光剣を修復させるために卓翼宸(たくよくしん)を利用し、最終的に趙遠舟(ちょうえんしゅう) を殺して彼の内丹を奪うことだったのです。

無事に緝妖司に戻った卓翼宸(たくよくしん)は、趙遠舟(ちょうえんしゅう) と静かに語らいます。戾(れい)気に支配される苦しみがどれほどのものか、今なら理解できると話す卓翼宸。かつては憎しみを向けた相手の苦悩に寄り添う彼の姿に、ぐっときましたね。趙遠舟(ちょうえんしゅう) もまた、妖であることは恥ではない。善の心を持ち続ければ、いつか人になれると、彼の出自の苦悩を受け止めます。まるで本当の兄弟のように心を通わせる二人。英磊(えいらい)が言ったように、緝妖隊はもう家族同然の存在になっているんですね。

しかし、卓翼宸の体は体内の氷夷(ひょう い)の妖力に蝕まれ、残された時間はわずか。彼は死ぬ前に雲光剣を修復し、白玖(はくきゅう)を救うことを強く願っていました。

一方、趙遠舟は文瀟(ぶんしょう)に対し、卓翼宸がお前を託したいと言っていたと、彼の気持ちを代弁するかのような優しい嘘をつきます。趙遠舟の心の傷を誰よりも気遣う文瀟(ぶんしょう)。二人の間にも、切ない想いが流れます。

その後、一行は昆仑山(こんろんさん)で星辰の陣を使い、大荒の修復に成功。その影響で、京都では白顔(はくがん)が人の姿を取り戻し、夫の司徒(しと)鳴(しとめい)と涙の再会を果たします。束の間の喜びに沸く緝妖隊でしたが、そこへ離崙(りろん)が襲来!英磊が結界と術で彼らの足を止め、その隙に仲間たちを先へと逃がします。

禁地に響く声、そしてあまりに過酷な選択

ついに一行は、氷夷(ひょう い)族の禁地崎巻洞(きがんどう)にたどり着きます。そこは、願いを叶える宝が眠ると同時に、生きては戻れないと恐れられる場所。洞窟の入り口には、おびただしい数の妖獣の骨が転がっていました。

仲間を危険に晒したくない卓翼宸は、一人で洞窟へ入ろうとしますが、趙遠舟や文瀟(ぶんしょう)たちがそれを許しません。仲間だろ!と引き留める彼らの姿に、胸が熱くなります。

洞窟の奥へ進むと、どこからか謎の声が響き渡ります。声の主は、雲光剣の修復には五色石が必要だが、それは既に卓翼宸の妖血を吸って壊れてしまったと告げます。そして、修復のためのもう一つの方法として、氷夷族の子孫である卓翼宸が、永遠にこの洞窟に留まり、声の主のそばにいることを要求するのでした。

あまりにも非情な要求に卓翼宸が反発すると、なんと趙遠舟、文瀟、裴思婧(はいしせい)の三人の足が瞬く間に氷で固められてしまいます!仲間を人質に取られ、選択を迫られた卓翼宸。彼は、自らが犠牲になることを決意します。

永遠の氷の中で…衝撃のラスト

仲間たち一人ひとりに別れの言葉を告げる卓翼宸。文瀟には趙遠舟を、趙遠舟には文瀟を託し、裴思婧(はいしせい)には文瀟を守ってくれたことへの感謝を伝えます。そして最後に、修復した雲光剣で必ず白玖(はくきゅう)を救ってくれ、と。

彼の覚悟を受け止め、涙ながらに見送る仲間たち。卓翼宸がゆっくりと祭壇の階段を上ると、彼の体にどんどん冷気がまとわりついていきます。

その時でした。

一人で行かせるものか!

卓翼宸の自己犠牲を見過ごせなかった趙遠舟が、法術で冷気を吹き飛ばし、彼のもとへ駆け寄ります。しかし、卓翼宸を助けようと冷気の陣に飛び込んだ瞬間、強烈な光が二人を包み込み…。

光が消えた後、そこには、互いに手を伸ばしたまま凍りついた、二つの晶瑩な氷の彫像だけが残されていました。

『大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~』第26話の感想

今回は、趙遠舟と卓翼宸、二人の絆の深さが胸に迫る回でした。当初は父と兄の仇として激しく憎み合っていた二人が、共に戦う中で互いの苦悩を理解し、唯一無二の存在となっていく過程は、この物語の大きな見どころの一つです。だからこそ、今回の結末はあまりにも衝撃的で、言葉を失いました。仲間を救うために自らを犠牲にしようとした卓翼宸の覚悟と、その彼を孤独にはさせないと、身を挺して助けようとした趙遠舟の友情。どちらの想いも本物で、尊いものでした。しかし、その強い想いが、二人とも氷漬けになるという最悪の結末を招いてしまったのです。誰かを思う純粋な心が、必ずしも幸福に繋がるとは限らない。そんな運命の残酷さに、ただただ胸が締め付けられます。残された文瀟たちの悲しみを思うと、心が痛くてたまりません。

つづく