氷漬けとなり命の危機に瀕した趙遠舟(ちょうえんしゅう) と卓翼宸(たくよくしん)。文瀟(ぶんしょう)と裴思婧(はいしせい)が悲しみに暮れる中、洞窟に宿る大妖から、二人を救うための試練が与えられる。幻境の中で、彼らはこれまで信じられてきた伝説の裏に隠された、衝撃的な真実を目の当たりにすることに。仲間との絆の強さが試される中、九死に一生を得た彼らは、次なる目的のため、新たな冒険へと旅立つことを決意する。しかし、その動きはすでに敵に察知されていた。

「大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~」あらすじネタバレ27話

目の前で氷の彫像と化してしまった趙遠舟(ちょうえんしゅう) 。その光景に、文瀟(ぶんしょう)は我を失い、絶望の淵に突き落とされます。かつて師匠を目の前で失い、今また親友の命が尽きるのを見て、自分の無力さを呪い、生きる意味さえ見失ってしまうのでした。彼女が自ら命を絶とうと懐剣に手をかけたその瞬間、裴思婧(はいしせい)がそれを叩き落とし、文瀟(ぶんしょう)を平手打ちします。二人を我に返らせたのは、悲しみと悔しさ。洞窟の中で、彼女たちはただ抱き合って泣き崩れるしかありませんでした。

そんな二人を見ていた洞窟の石壁に宿る大妖は、数千数百万年を生きてきた自分でも心を動かされるほどの、純粋な友情の姿に感慨を覚えます。そして、彼らにもう一度だけチャンスを与えることを決意しました。大妖の神識の中にある虚妄幻境で過去を覗き、もし二人が試練を乗り越えられたなら、命を救うと約束したのです。

幻境へと誘われた趙遠舟(ちょうえんしゅう) と卓翼宸(たくよくしん)は、そこで伝説の神々、氷夷(ひょう い)の対話を目にします。伝説では、応龍は乱を起こした罪で罰せられたとされていました。しかし、真実は全く違ったのです。

応龍は、大戦後の荒廃しきった大荒を救うため、自らの創世の力で星となり、世界を照らそうとしていました。そのために、自身の骨から作った雲光剣で自分を殺してほしいと、親友である氷夷に頼んでいたのです。親友を手に掛けることなどできないと苦悩する氷夷。その苦しみを見抜いた応龍は、氷夷に罪悪感を抱かせまいと、自ら雲光剣に身を投じ、命を絶ちました。何の罪も、何の咎も感じるなという言葉を残して…。

二人に語りかけていたのは、星となった今も神識をこの洞窟に残していた応龍本人でした。応龍は、伝説が偽りであること、そして彼が蒼生のために自ら犠牲になったことを趙遠舟(ちょうえんしゅう) に伝えます。それは、友のために全てを捧げる趙遠舟と卓翼宸(たくよくしん)の友情そのものでした。

神識が消えゆく中、応龍は卓翼宸に最後の言葉を託します。雲光剣は殺戮のためではなく、守護のために使えと。そして、万物を修復する力を持つ龍の鱗を大荒の東で求めるよう告げました。

その言葉と共に、二人の意識は現実世界へ。氷はゆっくりと溶け、命を取り留めた趙遠舟と卓翼宸。文瀟(ぶんしょう)と裴思婧(はいしせい)は、喜びのあまり彼らの胸に飛び込みました。

しかし、卓翼宸には過酷な運命が待っていました。応龍は最後の力で、人の身では妖の血に耐えられないため、氷夷の内丹を完全に吸収し、妖とならねばならないと告げます。卓翼宸はもはや人か妖かなど気にしませんでした。仲間を守るため、彼は応龍から龍骨を受け取り、完全に妖となる道を選んだのです。応龍の神識は、その役目を終え、静かに消滅していきました。

自らの内に強大な内丹を感じる卓翼宸。氷夷の血と応龍の骨を受け継いだ彼の正体は龍ではないかと仲間たちは推測しますが、趙遠舟だけは意地っ張りなロバだと軽口を叩き、いつもの空気が戻るのでした。

そこへ、白顔(はくがん)が現れ、白沢令を修復してくれた文瀟に感謝を述べます。しかし、白玖(はくきゅう)の話題になると、卓翼宸は罪悪感に顔を曇らせます。文瀟は、白玖(はくきゅう)から離崙(りろん)を引き剥がすには、大荒の奥深くに封印されている龍魚公主の龍鱗が必要だと語ります。

しかし、その会話は密かに傲因(ごういん)によって盗み聞きされ、すぐに甄枚(しん ばい)へと伝えられていました。甄枚は千里伝信で温宗瑜(おんそうゆ)に急報。緝妖隊の新たな目的に、早くも魔の手が忍び寄るのでした…。

『大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~』第27話の感想

今回は、友情というテーマが非常に深く描かれた回でした。趙遠舟と卓翼宸が見た、応龍と氷夷の自己犠牲の物語は、単なる過去の伝説ではなく、まさに彼ら自身の関係性を映し出す鏡のようでした。世界を救うために友に自分を殺させる応龍の覚悟と、その重責を背負う氷夷の苦悩は、胸に迫るものがあります。そして、その神話の真実を知り、友のために人であることを捨てる決断をした卓翼宸の姿には、彼の持つ優しさと強さが凝縮されていました。仲間との絆が試され、そしてより強固になる一方で、物語は龍魚公主という新たな謎を提示し、少しの安らぎも許さない展開を見せます。登場人物たちの背負う宿命の重さを改めて感じさせられる、見応えのある一話でした。

つづく