夢の世界に囚われた文瀟(ぶんしょう)と裴思婧(はいしせい)は、突如現れた趙遠舟(ちょうえんしゅう) の助けによって、辛くも現実世界への帰還を果たす。一行は、一連の花嫁失踪事件の犯人である妖魔・冉遺(ぜん・い)と対峙するため、彼の隠れ家へと向かう。そこで卓翼宸(たくよくしん)と冉遺の意外な過去の因縁が明らかになると同時に、事件の裏に隠されていた、あまりにも悲しい恋の物語が語られ始める。正義と私情、そして謎めいた趙遠舟の思惑が交錯し、物語は新たな局面を迎える。

「大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~」あらすじネタバレ5話

夢の世界に囚われた文瀟(ぶんしょう)を守る卓翼宸(たくよくしん)。そこに突如現れたのは、宿敵ともいえる趙遠舟(ちょうえんしゅう) でした。一触即発の空気が流れる中、趙遠舟(ちょうえんしゅう) はこのままでは二人が夢の中で死んでしまうと警告。夢から脱出する唯一の方法は、夢の中で自ら死を選ぶことだと告げます。

卓翼宸(たくよくしん)が雲光剣を鳴らすと、その音に導かれ、裴思婧(はいしせい)は夢の中で弟と共に湖に身を投げ、現実世界へと帰還しました。しかし、文瀟(ぶんしょう)には剣の音が届きません。彼女を救うため、趙遠舟(ちょうえんしゅう) は自ら文瀟(ぶんしょう)の夢の中へ。剣を渡し、彼女が自ら命を絶つのを手助けすることで、無事に夢から脱出させました。

目を覚ました裴思婧(はいしせい)は激しく吐血。夢に深く囚われるほど、身体への負担が大きいようです。しかし、もともと病弱だったはずの文瀟はまったくの無傷。その不可解な現象は、趙遠舟ですら理解できないものでした。

一行は趙遠舟の案内で、一連の事件の鍵を握る妖魔・冉遺(ぜん・い)とついに対面します。そこで明かされたのは、意外な過去でした。十数年前、冉遺は卓翼宸(たくよくしん)の兄・卓翼軒(たくよくけん)と出会い、悪夢にうなされる弟を助けたいという彼のために、自身の鱗を与えていたのです。そのおかげで、卓翼宸は長い間悪夢から解放されていました。しかし、その恩人であるはずの兄を死に追いやったのが趙遠舟だと信じる卓翼宸は、再び彼に剣を向けます。趙遠舟はいつかお前に殺される日を待っていると、意味深な言葉を残すのでした。

話は失踪した斉(チー)小姐のことに。冉遺は、彼女を愛していたこと、しかし彼女の父親である斉老爷(チーろうや)によって仲を引き裂かれた悲しい過去を語り始めます。斉老爷は娘の幸せなど微塵も考えず、息子のため莫大な結納金を得ることしか頭にありませんでした。冉遺が花嫁ばかりを狙っていたのは、愛する斉小姐が望まぬ結婚をさせられるのを阻止し、父親の心を変えさせるための悲痛な抵抗だったのです。しかし、その願いも虚しく、斉老爷は娘の命さえ軽んじていました。

非情な斉老爷に怒りを燃やす冉遺。その姿を見て、趙遠舟は夢の中に入り、斉老爷を殺害して現実世界へ連れ戻します。さらに、卓翼宸は斉家の枯れ井戸から、冉遺と斉小姐に協力したために殺されたであろう5人の使用人の遺体を発見。井戸に残る邪気から、趙遠舟が事件に深く関与していることを確信します。

趙遠舟が冉遺に協力した本当の目的は、彼の夢を操る能力を使い、文瀟が失った白澤令の記憶を取り戻させることでした。文瀟は確かに白澤令を受け取った記憶を思い出しますが、なぜ自分にその神力がないのかは謎のままです。

すべての真相が明らかになり、罪を償う覚悟を決めた冉遺。その時、一艘の船が近づき、斉小姐が現れます。あなたと共に生き、共に死にたいと告げる彼女の言葉に、冉遺の心は揺らぎます。斉小姐と共に故郷の大荒へ帰りたいと願う冉遺ですが、多くの罪を犯した彼を、緝妖隊の卓翼宸が見逃すはずがありません。

かつて悪夢から救ってくれた恩を盾に、見逃してほしいと懇願する冉遺。卓翼宸も情状酌量を願い出るとは言うものの、最低でも千年の監禁は免れないと告げます。それを拒絶した冉遺は、愛する人と生きる未来を懸け、卓翼宸との激しい戦いに身を投じるのでした。

『大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~』第5話の感想

今回は、連続花嫁失踪事件の裏に隠された、妖魔・冉遺と斉小姐のあまりにも切ない恋物語が胸を打ちました。ただ愛する人と共にいたかっただけなのに、人間の欲によって引き裂かれ、罪を犯さざるを得なかった冉遺の悲しみには、同情を禁じえません。単なる悪役では片付けられない、彼の行動の動機が明らかになるにつれて、物語にぐっと深みが増したように感じます。一方で、趙遠舟の行動はますます謎めいています。彼は一体何を目的とし、どこへ向かっているのでしょうか。彼の存在が、善と悪の境界線を曖昧にし、物語を一層複雑で魅力的なものにしています。正義と、かつての恩人の間で揺れる卓翼宸の葛藤も痛いほど伝わってきて、それぞれのキャラクターが抱える想いが交錯する、見応えのある回でした。

つづく