都で再び奇怪な連続殺人事件が発生。被害者は皆、心を抜き取られ、現場には謎の鹿の角の印が残されていました。捜査を進める趙遠舟(ちょうえんしゅう) たちは、事件の背後に伝説の大妖乗黄(じょうこう)の存在を突き止めます。一方、弓の名手である裴思婧(はいしせい)は、死んだはずの弟・裴思恒(はいしこう)と再会し、彼が事件に深く関わっていると確信。過去の悲劇と現在の事件が交錯する中、一行は真相を解明するため、乗黄が潜むという危険な幻の空間観象台へと足を踏み入れます。人の執念が渦巻くその場所で、彼らを待ち受ける衝撃の真実とは一体何なのでしょうか。
「大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~」あらすじネタバレ8話
『大夢帰離』第8話、ただの妖怪退治モノかと思いきや、どんどん人間(と妖)の深い業や悲しみが描かれてきて、もう目が離せません。特に今回は、裴姉弟の過去と、新たな大妖の不気味な存在が明らかになり、物語が大きく動きました。
さっそく、胸が締め付けられるような第8話の世界に飛び込んでいきましょう!
心を抜かれた死体と、伝説の大妖乗黄の影
物語は、裴思婧(はいしせい)が部屋で弟の裴思恒(はいしこう)と出くわす、緊迫のシーンから始まります。時を同じくして、趙遠舟(ちょうえんしゅう) 、そして白玖(はくきゅう)のチームも、それぞれ梁から吊るされた無残な死体を発見。どの死体も心臓が抜き取られ、その背後の天井には不気味な鹿の角の印が描かれていました。
この印を見て、趙遠舟(ちょうえんしゅう) の顔色が変わります。彼が言うには、この鹿の角は古より記録に残る大妖乗黄(じょうこう)の印だとのこと。乗黄は書物では吉祥の象徴とされていますが、その実態は人の血を糧とし、ほぼ永生を生きる凶悪な存在。自分たちが想像する以上に、とてつもなく強大な敵と対峙していることを悟り、一行に緊張が走ります。
悲しき姉弟の対決と、3ヶ月前の真実
裴思婧(はいしせい)は、目の前の惨状が弟・裴思恒の仕業だと確信し、彼を激しく問い詰めます。しかし、裴思恒は姉上は僕のした良いことなど一度も覚えていないくせにと反発。言葉は通じず、二人はついに刃を交えることに。姉弟の悲しい戦いに割って入ったのは、駆けつけた趙遠舟(ちょうえんしゅう) と卓翼宸(たくよくしん)でした。卓翼宸(たくよくしん)が趙遠舟直伝の技滴水成冰で裴思恒をわずかに上回り、多勢に無勢と見た裴思恒は塀を乗り越え逃走します。
夜、裴思婧(はいしせい)は白玖(はくきゅう)と文瀟(ぶんしょう)に衝撃の事実を打ち明けます。実は3ヶ月前にも全く同じ手口の事件があり、その現場で妖と化した裴思恒を目撃した彼女は、自らの手で弟を射殺したというのです。しかし、亡骸は焼却したはずなのに、なぜ今、弟が目の前に現れたのか…。さらに、今回の事件の手がかりを自分に与えたのも、その裴思恒本人だというから、謎は深まるばかりです。
幻境への突入、執念が作り出す悪夢
全ての謎は乗黄に繋がると考えた一行は、趙遠舟の案内で、乗黄が住むという観象台へ向かいます。そこにあった日晷(ひどけい)こそが、乗黄が作り出した幻境への入り口でした。一行は互いの手首を縄で結び、英磊(えいらい)を見張りに残して幻境へと足を踏み入れます。
そこは、人の執念が具現化した世界でした。
裴思婧は、弟・裴思恒が密かに武術の訓練に励んでいた過去の幻を見せられます。父や祖父から期待されず、病弱だと決めつけられてきた裴思恒。姉上のように認められたかったという悲痛な叫びと共に、彼は裴思婧の愛用の矢猟影箭を奪い去ってしまいます。
一方、趙遠舟たちが迷い込んだのは、きらびやかな天香閣。しかし、そこは天香閣のナンバーワン花魁であり続けたいと願う舞女・芷梅(しばい)の執念が作り出した夢の世界でした。乗黄は、そうした人々の強い執念につけ込み、彼らを人偶に変えていたのです。
そしてついに、裴思婧は乗黄と対峙します。弟を妖に変えた理由を問う彼女に、乗黄は静かに告げるのでした。
私が彼を妖にしたのではない。彼自身の心にあった執念が、今の彼を作り上げたのだと。
『大夢帰離~明かせぬ想い、宿命の朱~』第8話の感想
今回のエピソードは、執念というテーマが色濃く描かれた回でした。特に、裴思恒の心の叫びには胸が締め付けられました。彼は決して根っからの悪人ではなく、ただ家族に、そして敬愛する姉に認められたい一心で道を誤ってしまった悲しい存在です。彼が抱えていた劣等感や焦燥感は、誰の心にも潜む可能性のある弱さであり、非常に人間臭く感じられました。
また、そんな弟を一度はその手で殺めた裴思婧の苦悩も計り知れません。彼女の強さの裏にある脆さや、弟への断ち切れない情がひしひしと伝わってきます。
そして、大妖・乗黄の言葉は、この物語の核心を突くものでした。悪は外から来るのではなく、人の心の内から生まれるのだと。彼の存在は単なる敵役にとどまらず、登場人物たち、そして私たち視聴者に人の心とは何かを問いかける哲学的な役割を担っているように思えます。それぞれのキャラクターが自らの執念とどう向き合っていくのか、今後の展開から目が離せません。
つづく