第26話 ネタバレ

求婚ラッシュと牡丹の決断

夜、牡丹(ぼたん)こと何惟芳(か いほう)とささやかな祝杯をあげていた。やっとの思いで手に入れた日常だ。うまい肉を食いながら、二人の連携プレーをたたえ合う。そんな穏やかな時間は、突然の来訪者に破られた。

戸を叩いたのは、いとこの李荇(り こう)だ。牡丹が大変な目に遭ったと聞きつけ、駆けつけてきたらしい。そして開口一番、俺の妾になれと言い出した。そうすればお前を守れる、と。いやいや、心配してくれるのはありがたいけど、なんでそうなるんだよ。

そこへ、今度は劉暢(りゅう ちょう)までやって来る。手には何か持っている。彼は誰にもお前を傷つけさせない。誰かの奴婢になる必要もないと言って、別の屋敷を用意したと告げた。もうめちゃくちゃだ。

この状況を面白がっていたのが、蒋長揚(しょう ちょうよう)。彼は牡丹の身分証は俺が持っている。高く値をつけた方に売ってやろうなんて言い出す始末。牡丹の堪忍袋の緒が切れた。彼女は近くにあった棍棒を手に取ると、男たちを全員叩き出して、ピシャリと戸を閉めた。俺の周りの男は、まともな奴が一人もいない。牡丹はそう確信した。

彼女は決意する。もう誰にも頼らない。自分の力で生き抜いてやる、と。ちょうど芳園が売りに出されていると聞き、牡丹は質屋から金を借りて買い戻そうと考えた。でも、世の中はそんなに甘くない。翌日、大金を持って駆けつけた時には、すでに芳園は花行に買われた後だった。牡丹は諦めず、その資金を元手に東市で新しい店を探すことにした。

勝意の悲劇

牡丹の新しい店花満築は、東市で開店した。小春(しょうしゅん)が開発した美容クリームが大ヒット。幸先の良いスタートを切った。でも、牡丹の心は晴れない。この店は、親友の勝意(しょうい)がいたら、彼女が切り盛りするはずだった。そう思うと、胸が締め付けられる。

その頃、勝意は夫の王擎(おう けい)の家で、花満築の開店を祝うために刺繍をしていた。白い牡丹の花をあしらった、美しい絹のハンカチだ。そこへ、王擎が酔って帰ってくる。彼は勝意が刺繍をしているのを見るなり、不機嫌そうにそのハンカチをめちゃくちゃに引き裂いた。

その瞬間、勝意の中で何かが切れた。今まで溜め込んできた怒りと絶望が、一気に噴き出す。彼女は机の上のハサミを手に取ると、王擎に突き立てた。何度も、何度も。憎しみと怒りが、彼女を突き動かす。王擎が息絶えるまで、その手は止まらなかった。

事件の後、勝意は役所に自首した。牡丹が知らせを受けて駆けつけた時、彼女は公堂の上で自らの命を絶った後だった。牡丹と朱福(しゅふく) は、親友の亡骸を前にただ泣き崩れることしかできなかった。

世間の声と牡丹の戦い

勝意の事件は、すぐに街中の噂になった。夫を殺した毒婦。世間は彼女をそう呼び、面白おかしく物語に仕立て上げた。牡丹は、それが許せなかった。事実を歪められた物語をすべて買い占め、火にくべて燃やしてしまう。そして、自らの手で、勝意の本当の物語を書き記した。この男尊女卑の世の中で、たった一人で戦うことを決めたんだ。

そんな牡丹に、新たな試練が訪れる。貴族からの花の注文が、ぱったりと途絶えた。すでに入っていた予約まで、二件もキャンセルされる始末。原因はすぐに分かった。県主の李幼貞(り ようてい)が、貴族の女性たちに花満築で花を買うなと圧力をかけたのだ。以前、劉暢(りゅう ちょう)が酔って牡丹を訪ねてきたことへの、陰湿な嫌がらせだった。

でも、牡丹は少しも動じない。貴族がダメなら、別の客を探すまでだ。平康坊や都中の舞坊(ぶぼう)では、毎日のように大量の花が使われる。県主が貴族を縛ることはできても、踊り子たちの商売まで口出しはできない。

新たな商機と嫉妬する男

牡丹はすぐに動き、歡雲楼(かんうんろう)をはじめとする舞坊への花の供給を始めた。店の経営は安定したものの、収入は以前より二割ほど減ってしまった。

そんな中、牡丹は歡雲楼で新しい商機を見つける。踊り子たちが安い化粧品で肌を荒らしているのを見て、安くて質の良い洗顔料や化粧品を作ろうと考えたんだ。さっそく試作品を作り、自分で試してみる。

その姿を偶然見かけたのが、蒋長揚(しょう ちょうよう)だ。念入りに化粧をする牡丹を見て、彼はとんでもない勘違いをする。好きな男でもできたのか。嫉妬にかられた彼は、慌てて牡丹の元へ駆けつけ、真偽を確かめようとする。

第26話の感想

今回は、本当に息が詰まる回だった。特に勝意の物語は、あまりにも悲しすぎる。夫の王擎から暴力を受け、心も体も追い詰められていく様子は、見ていて本当に辛かった。彼女が最後に選んだ道は、決して許されることじゃない。でも、そうするしかなかった彼女の絶望を思うと、胸が張り裂けそうになる。彼女が自ら命を絶つシーンは、涙なしには見られなかった。

そんな重い展開の中で、牡丹の強さが際立っていた。親友を失った悲しみに暮れるだけじゃなく、彼女の名誉を守るために一人で世間と戦う姿には、心を打たれたよ。事実を捻じ曲げた物語を燃やし、自ら真実を書き記す場面は、このドラマのハイライトの一つだと思う。

前半の、牡丹に男たちが群がるコミカルなシーンとの落差もすごかったな。あのわちゃわちゃしたやり取りがあったからこそ、後半の悲劇がより一層際立って感じられた。そして最後の、蒋長揚の嫉妬シーン。重苦しい雰囲気の中で、少しだけクスッと笑える場面があって救われた。二人の関係がどうなっていくのか、ここからがまた楽しみだ。

つづく