血塗られた黔州への道程と明かされる巫医の足跡

長安を離れ西南の黔州へと向かう安郡王の一行。

大太監の秦欒が放った逃亡犯の許如帰による凄惨な襲撃が彼らを襲います。

武術の心得がない楚楚(ソ・ソ)の危機を救ったのは、身を挺した女侠の冷月(レイ・ゲツ)と、駆けつけた蕭瑾瑜(しょう・きんゆ)の双子の兄である蕭瑾璃(しょう・きんり)でした。

一方の長安では唐宣宗による異例の人事が断行され、楚楚(ソ・ソ)の故郷ではついに「玉面判官」へと繋がる巫医の過去が語られる息もつかせぬ第10話です。

許如帰の猛追と長安で渦巻く私鋳銭の闇

馬車上の死闘と冷月(レイ・ゲツ)の負傷、都虞候の剣閃

蕭瑾瑜(しょう・きんゆ)の馬車が黔州の境界に近づいた瞬間、周囲から許如帰率いる暗殺部隊が湧き出します。

殺し屋の刃が馬車の屋根を貫き、蕭瑾瑜と楚楚は間一髪で郊外へ脱出。

侍衛たちと暗殺者が入り乱れる大乱戦となり、武力を持たない楚楚に凶刃が迫りました。

絶体絶命の危機。

そこへ冷月が飛び込み、我が身を盾にして楚楚を庇います。

さらに都虞候の蕭瑾璃(しょう・きんり)が軍を率いて到着し、圧倒的な武力で殺し屋たちを退散させました。

軽傷を負った冷月の手当てをしながら、自責の念で涙をこぼす楚楚。

冷月は服を弁償してくれればいいと笑い飛ばし、楚楚の心を軽くします。

名家である冷家の娘がなぜ江湖を放浪しているのか。

楚楚の純粋な問いに、冷月は深い憂いを帯びた瞳で押し黙りました。

馬車の外では、景翊(ケイ・ヨク)が冷月の怪我を心配してうろたえ歩く姿がありました。

李靖の宝刀と兵部尚書に抜擢された薛汝成の戸惑い

長安の公主府では、西平公主が侍女の半夏を薛汝成の元へ遣わします。

吏部が彼を内偵しているため、周囲の耳目に警戒するよう忠告を届けました。

同じ頃、唐宣宗は文官の薛汝成を軍事を司る兵部尚書に任命する勅命を下します。

経験不足を理由に固辞する薛汝成。

しかし宣宗の意志は固く、第9話で秦欒の顔面に突きつけた開国の名将の武器「李靖の宝刀」を彼に下賜しました。

軍権を奪還しようとする皇帝の強烈な意志表示です。

また、黔州刺史の李璋から長安の高官たちへ手厚い贈答品が届きます。

景閣老は賄賂を嫌い、長安の特産品に変えて返送を命じました。

そこへ侍衛長の呉江が訪れ、無言で一枚の銅銭を差し出します。

景閣老はその銅銭を見て即座に馬車を手配し、薛汝成の屋敷へ急行。

第8話で蕭瑾瑜が皇帝に密奏した「私鋳銭(偽造貨幣)」の調査こそが、黔州行きの真の目的であると二人の重臣は察知しました。

虚弱体質の理由と楚家の温かな出迎え

黔州へ向かう馬車の中、おしゃべりな楚楚を見た冷月は、彼女が蕭瑾璃によく似ていると笑います。

幼い頃の蕭瑾璃は非常に腕白でした。

ある日彼が蓮池に落ちた際、泳げない蕭瑾瑜が躊躇なく飛び込んで兄を救出。

それ以来、蕭瑾瑜は重い虚弱体質を抱えることになり、蕭瑾璃は弟への深い罪悪感と異常なまでの愛情を持つようになったのです。

野営の夜。

蕭瑾瑜が兄の持つ銅銭を調べると、23枚中18枚が悪質な私鋳銭でした。

偽金の蔓延を黙認しているはずの李璋ですが、楚楚によれば彼は橋を架けるなど民に慕われる名官だと言います。

黔州関嶺県に到着した一行を、楚楚の兄の楚河が驚きと共に迎え入れました。

楚家へ戻ると、無断で家を出た楚楚を祖父が杖で叩こうと激怒。

蕭瑾瑜は身分を明かし、関嶺県の過去の裁判記録を一言一句違わず暗唱してみせます。

その完璧な知力により、検視官一家である楚家の面々を完全に信用させました。

蕭瑾瑜は楚楚の父である楚平に、謎の巫医について尋ねます。

足が悪く村人から忌み嫌われていた巫医を、楚楚だけが熱心に世話をし、彼から検視の知識を学んだという事実。

第6話の調査報告通り、巫医は数年前に朝廷の討伐軍が村へ来た直後、楚河に門を閉ざすよう言い残して姿を消していました。

独自考察・用語解説

唐宣宗が薛汝成に下賜した「李靖の宝刀」は、皇室の軍事権奪還の象徴です。

文官である彼をあえて兵部尚書に据えたのは、宦官の息がかかっていない清廉な人物に兵権を握らせるための強硬策。

第9話で秦欒を威嚇したあの刀がここで活きる脚本の構成力に唸らされます。

そして黔州で横行する私鋳銭の問題。

刺史の李璋や鄭県令が民から慕われる善政を敷いているという事実と、偽金が野放しにされている現状が大きく矛盾しています。

地方官が善人に見せかけて裏で巨大な経済犯罪に手を染めているのか。

あるいは、偽金の流通を止められないほどの強大な軍事力(西南節度使の冷沛山など)が圧力をかけているのか。

巫医が朝廷の討伐軍を恐れて姿を消したという証言は、彼が「玉面判官」こと蕭恒であるという仮説をさらに強固なものにしました。

甘露の変の余波で謀反の罪を着せられた彼にとって、朝廷の軍隊は命を狙う死神に他なりません。

感想と次回の見どころ

蕭瑾璃が弟を溺愛する背景に、己の命と引き換えに池へ飛び込んだ幼き日の蕭瑾瑜の自己犠牲があったとは驚きです。

冷酷に見える安郡王の底知れぬ家族愛が、彼の人格に深い奥行きを与えています。

怪我をした冷月の外でオロオロと歩き回る景翊(ケイ・ヨク)の純情な姿も、緊迫した物語の素晴らしい清涼剤になっていました。

いよいよ楚家の面々と対面し、蕭瑾瑜の人間離れした記憶力で舅たちを黙らせる展開は痛快そのもの。

次回、失踪した巫医の足取りを追う蕭瑾瑜が、黔州の地に隠された蕭恒の痕跡をどう発掘していくのか。

長安の陰謀と西南の偽金事件が一つに結びつく、怒涛の謎解きから目が離せません。

つづく