愛する者を奪われた安郡王の焦燥と、過去が牙を剥く凄絶なる救出劇
第15話で許如帰の卑劣な罠に落ち、拐われた楚楚(ソ・ソ)。
常に冷徹な判断を下してきた安郡王・蕭瑾瑜(しょう・きんゆ)が、生涯で初めて感情を爆発させて景翊(ケイ・ヨク)に詰め寄ります。
そして楚楚(ソ・ソ)の拘束先で語られたのは、彼女の母の死の真相と、蕭瑾瑜(しょう・きんゆ)と楚楚の間に横たわる「親世代の血塗られた因縁」でした。
法医学が暴いた母の他殺の証拠が、ついに大唐を揺るがす謀反事件の全貌へと直結する第16話です。
第16話 詳細解説:許如帰の独白と剣南節度使の反乱
冷静さを失う蕭瑾瑜と、遺留品が導く許氏の身分
楚楚の行方を完全に見失った蕭瑾瑜。
彼は激しい焦燥感に駆られ、大理寺少卿・景翊(ケイ・ヨク)の元へ飛び込んで胸ぐらを掴みます。
第15話で景翊の靴底に付着していた泥の足跡。蕭瑾瑜は彼が何かを隠していると疑っていました。
景翊は、幽霊屋敷から墓地に至るまで蕭瑾瑜の身の安全を守るために尾行していたのだと弁明し、長安の父・景閣老から届いた密書を提示します。
激しい口論の末に冷静さを取り戻した二人。
彼らは楚楚の母・許氏の遺品である衣服や装飾品の分析を再開しました。
衣服に施された精緻な「蜀刺繍」は、市井の針子が作れる代物ではありません。
装飾品の型からも、許氏が官僚の家系に連なる女性であることは疑いようのない事実でした。
許方宗の告白と、御史・蕭恒を殺した楚楚の父
薄暗い部屋で楚楚が目を覚ますと、そこには変装の仮面を剥ぎ取った許如帰が座っていました。
彼の口から語られた真実は、楚楚の存在意義を根底から覆す残酷なものでした。
許如帰の本名は「許方宗」。楚楚の母・許依香の実の兄だったのです。
太和8年。18歳だった依香は、雲易という気鋭の武官に嫁ぎました。
雲易は軍功を重ね、やがて剣南節度使・陳瓔の最も信頼厚き副将へと昇り詰めます。
しかし、陳瓔の軍は朝廷に対して兵を挙げました。
その際、彼らの反逆を告発した朝廷の御史を、陳瓔と雲易が殺害したというのです。
その御史の名こそ、蕭瑾瑜の実の父「蕭恒」でした。
身重だった許依香は実家へ逃げ延びましたが、保身に走った兄の許如帰は、譚管家が閂(かんぬき)で依香の後頭部を殴り殺すのを冷酷に黙認しました。
第14話の開棺検視で楚楚自身が証明した「母の頭部の鈍器による他殺痕」の伏線が、この瞬間に完璧に回収されたのです。
許家の古民家での激闘と、すれ違う二人の残酷な現実
許如帰は楚楚に絶望を突きつけます。
蕭瑾瑜の父を殺したのは楚楚の父。二人の間には決して埋まることのない「血海深仇(血みどろの深い恨み)」があるのだと。
さらに、卓越した推理力を持つ蕭瑾瑜であれば、許氏の遺留品からすでに楚楚の正体に気づいているはずだと追い打ちをかけました。
その言葉通り、蕭瑾瑜は許氏の実家の古い屋敷(許家老宅)を割り出し、完全包囲を敷いていました。
突入を察知した許如帰は、自らの罪を減らすために楚楚の目の前で譚管家を口封じで殺害。
楚楚の悲鳴を聞きつけた蕭瑾瑜と冷月(レイ・ゲツ)が屋敷内へ飛び込みます。
逃亡を図る許如帰と冷月(レイ・ゲツ)が激しく刃を交えますが、そこへ都虞候の蕭瑾璃(しょう・きんり)が駆けつけ、圧倒的な武芸で許如帰を制圧しました。
高熱で昏睡状態に陥った楚楚を、蕭瑾瑜は楚家へ抱き抱えて帰り、ベッドの傍らで献身的に看病します。
薬を運んできた義兄の楚河は、無意識のうちに蕭瑾瑜の手を強く握りしめる楚楚の姿を見て激しく嫉妬し、彼を遠ざけようとします。
秦欒の皆殺し指令と、許如帰の自白が浮き彫りにする別の闇
庭先で景翊は重い口を開きました。
楚楚の父親が陳瓔の副将であることが確定すれば、彼女は大唐の律令により「逆党の遺児」として斬首の刑に処されます。
目を覚ました楚楚は、安心から思わず蕭瑾瑜の胸に飛び込みますが、直後に許如帰から聞かされた「父同士の仇」という残酷な現実を思い出し、激しい戸惑いと恐怖に顔を歪めました。
一方、長安では大太監の秦欒が、楚楚と許如帰の血縁関係を知り激怒していました。
神策軍の周翰へ、楚楚を捕らえて蕭恒の行方を吐かせた後、許如帰を含めた関係者を皆殺しにするよう命じます。
黔州の県衙では、蕭瑾瑜による許如帰の過酷な拷問と尋問が行われていました。
痛みに耐えかねた許如帰は、如帰楼の真の主が秦欒であり、暗殺指示もすべて彼の命令であったとあっさり自白。
しかし、蕭瑾瑜が追及した「黔州の私鋳銭(偽金)」と「昌王生存の噂」について問われると、許如帰は激しく震えながら全く知らないと怯えきっていました。
独自考察・用語解説:捏造された謀反と「血海深仇」のパラドックス
許如帰の口から語られた「陳瓔と雲易が蕭恒を殺した」という過去の謀反事件。
表面的に見れば、蕭瑾瑜と楚楚は親の仇同士という「ロミオとジュリエット」のような悲劇的構図に陥りました。
しかし、物語のこれまでの事実を照らし合わせると、この反乱の構図そのものが巨大な冤罪である可能性が極めて高くなります。
第12話で判明した通り、長年姿を消していた巫医(蕭恒)は、楚楚に検視の技術を教え込み、彼女を密かに守り育ててきました。
もし楚楚の父・雲易が本当に自分を殺そうとした仇の部下であれば、蕭恒がその遺児を慈しむ理由がありません。
すなわち、太和8年の剣南節度使の反乱は、秦欒ら宦官勢力が軍権を掌握するためにでっち上げた冤罪(甘露の変の余波)であり、蕭恒と陳瓔たちは共に朝廷の腐敗と戦おうとした同士であったと推測できます。
また、許如帰が秦欒の指示で動いていたことは確定しましたが、私鋳銭や昌王の件については完全に無知でした。
これは第14話で暗躍を見せた兵部尚書・薛汝成(武宗の嫡出子)や、黔州刺史・李璋といった別の巨大な勢力が、秦欒の監視網の目を盗んで独自の国家転覆計画を進行させている明確な証左です。
感想と次回の見どころ
拐われた楚楚を助けるため、普段の冷静な仮面をかなぐり捨てて景翊に怒鳴り散らす蕭瑾瑜の姿に、彼がどれほど楚楚を深く愛しているかが痛いほど伝わってきました。
そして、母・許氏が兄の保身のために殴り殺されたというあまりにも救いのない真実。開棺検視で楚楚自身が見つけた傷跡が、こんな残酷な形で自分の身に降りかかるとは不憫でなりません。
自分が「安郡王の親の仇の娘」であると思い込んでしまった楚楚。
蕭瑾瑜の胸に抱きつきながらも、ふと我に返り絶望の表情を浮かべる彼女の演技が秀逸でした。
次回、逆党の遺児という死罪の宿命を背負った楚楚を、蕭瑾瑜はどのように守り抜くのか。
秦欒の刺客が迫る中、彼らが仕掛ける次なる一手が試される緊迫の展開から目が離せません!
つづく