あらすじ
ある日、多くの人々でごった返す地下鉄の駅で、一人の男が「爆弾を持っている」と騒ぎを起こす。男は地元で著名な弁護士、張超(ジャン・チャオ)。駆け付けた警察に身柄を拘束されるが、彼が持っていたスーツケースから出てきたのは爆弾ではなく、手足を縛られた男の死体だった。
この衝撃的な事件は瞬く間に市全体の注目を集め、優れた洞察力を持つ刑事の厳良(イェン・リャン)が捜査の指揮を執ることになる。
死体の身元は、江陽(ジアン・ヤン)。彼はかつて将来を嘱望された若き検察官だったが、数年前に収賄と汚職の罪で3年間服役し、出所後に行方が分からなくなっていた人物だった。
容疑者の張超(ジャン・チャオ)は当初、あっさりと犯行を認める。しかし、裁判が開かれると法廷の場で突如として供述を覆し、完璧なアリバイを提示。捜査は完全に行き詰まってしまう。
不可解な謎に満ちたこの事件。しかし、それはすべて、ある巨大な秘密を白日の下に晒すために、死んだはずの江陽(ジアン・ヤン)たちが7年もの歳月をかけて仕掛けた、命がけの計画の始まりに過ぎなかった。
過去と現在、そして3つの異なる時間軸が交錯しながら、一つの隠蔽された事件の真相を追い求めた者たちの、長きにわたる執念とあまりにも大きな代償を描く、重厚なクライムサスペンス。
見どころ
1. 3つの時間軸が交錯する、パズルのような巧みな物語構成
本作の最大の魅力は、異なる3つの時間軸の物語が同時並行で進み、やがて一本の線として繋がっていく、その見事な脚本にあります。
- 【現在】2010年:刑事・厳良(イェン・リャン)が「スーツケース死体遺棄事件」の謎を追うパート。
- 【過去】2003年~:若き検察官・江陽(ジアン・ヤン)が、友人の不可解な死の真相を追い、巨大な悪に立ち向かうパート。
- 【大過去】2000年:すべての始まりとなった、一人の青年教師の死にまつわるパート。
これらの物語が巧みに織り交ぜられ、散りばめられた伏線が回収されていく様は、まるで精巧なパズルを解き明かすかのよう。ミステリーファンならずとも、その緻密な構成に引き込まれること間違いなしです。
2. 「正義」の代償を問う、魂を揺さぶる重厚な人間ドラマ
本作は単なる犯人当てのミステリーではありません。物語の核となるのは、正義を貫くために、自らのキャリア、恋人、名誉、そして人生のすべてを犠牲にしていく検察官・江陽の壮絶な生き様です。
希望に満ちた前途有望な青年が、社会の巨大な闇に立ち向かう中で、心身ともに蝕まれ、絶望の淵へと追いやられていく姿は痛切で、観る者の胸を強く締め付けます。なぜ彼は、すべてを失ってまで真実を追い求めたのか。その問いが、本作に深い感動と余韻をもたらしています。「正義の道を歩めば歩むほど、足元はぬかるみ、やがて光の届かない煉獄へと堕ちていく」という原作の表現が、見事に映像化されています。
3. 中国トップクラスの実力派俳優陣による圧巻の演技
主人公たちを演じる俳優陣の、魂のこもった演技も必見です。
冷静沈着な刑事・厳良(イェン・リャン)を演じる廖凡(リャオ・ファン)、そして特に、理想に燃える青年から絶望に打ちひしがれた男へと変貌していく江陽を演じきった白宇(バイ・ユー)の演技は圧巻の一言。その鬼気迫る表情や佇まいは、キャラクターの苦悩と執念を生々しく伝え、物語に圧倒的な説得力を与えています。彼らの演技合戦が、この重厚な物語をさらに高みへと引き上げています。
4. 中国社会のタブーに切り込んだ、骨太なテーマ性
本作は、エンターテインメント作品でありながら、司法の腐敗や権力の不正といった、現代中国が抱える社会の闇へ大胆に切り込んでいます。その鋭い視点と骨太なテーマ性は、中国国内で驚きをもって受け止められ、配信開始直後から口コミで評判が広がり、社会現象ともいえる大ヒットを記録しました。中国ドラマの新たな可能性とクオリティの高さを証明した、まさに傑作と呼ぶにふさわしい一作です。
各話あらすじとネタバレ(全12話)
1話
ある日、江潭市の地下鉄駅で一人の男が爆弾騒ぎを起こし、逮捕される。男が持っていた巨大なスーツケース。その中から見つかったのは爆弾ではなく、若い男性の死体だった。容疑者として捕まった張超(ジャン・チャオ)は、市内で有名なエリート弁護士。驚くことに、被害者の江陽(ジアン・ヤン)は彼の元教え子だった。張超は取り調べであっさりと犯行を自白し、事件は早期解決かと思われた。だが、彼の完璧すぎる供述とスムーズすぎる捜査の展開に、担当刑事は違和感を覚える。すべてが仕組まれているような、奇妙な事件が幕を開ける。
2話
弁護士・張超(ジャン・チャオ)の不可解な供述で、地下鉄の死体遺棄事件の捜査は難航する。そんな中、新聞社にHGPと名乗る人物から脅迫状が届いた。指定通りに写真を新聞に掲載しなければ、爆弾を爆発させるという内容だ。刑事の厳良(イェン・リャン)は、犯人の挑発に乗りながら捜査を進めることを決意する。一方、被害者・江陽(ジアン・ヤン)の過去を調べるうちに、10年前に起きた別の死亡事件との奇妙な接点が浮かび上がる。現代の事件と過去の謎が交錯し始め、物語は一気に複雑な様相を呈していく。
3話
若き検察官の江陽(ジアン・ヤン)は、不審な死を遂げた大学の同級生、侯貴平(ホウ・グイピン)の事件を再調査し始める。彼は真相を求めて平康県へ向かうが、地元の警察は非協力的で、刑事の李建国(リー・ジェングオ)に門前払いされてしまう。唯一の手がかりを求め、江陽は風変わりな法医学者・陳明章(チェン・ミンジャン)に接触する。一方、現代では厳良(イェン・リャン)が地下鉄爆破事件の捜査を継続。新聞記者に届いた第二の手紙から、犯人の新たな手がかりを探る。過去と現在、二つの時間軸で、事件の闇が少しずつ姿を現し始める。
4話
2003年、若き検事・江陽(ジアン・ヤン)は、上層部から侯貴平(ホウ・グイピン)事件の捜査中止を命じられる。しかし彼は命令に背き、たった一人で非公式な調査を続行する決意を固める。その矢先、彼の身に直接的な脅威が迫り始める。
2010年、刑事・厳良(イェン・リャン)は事件関係者への聞き込みと遺留品の再調査から、10年前に焼失した写真館の存在を突き止める。
そして物語は2000年へ。正義感あふれる教師だった侯貴平が、なぜ命を狙われるに至ったのか。彼の教え子を襲った悲劇的な事件と、彼の孤独な戦いの始まりが、ついに明らかになる。
5話
事件の決定的な証拠写真を撮った侯貴平(ホウ・グイピン)は、予期せぬ裏切りに遭い、危険な状況に追い込まれる。彼は自らの正義を貫くため、たった一人で警察へ向かうことを決意する。一方、現在の捜査では、ついに張超(ジャン・チャオ)が重い口を開き、侯貴平との過去を語り始める。厳良(イェン・リャン)の身には直接的な危険が迫っていた。過去のパートでは、孤立無援だった江陽(ジアン・ヤン)の捜査が大きな転機を迎える。彼の前に、頼もしい協力者が現れたのだ。過去と現在、二つの時間軸で物語が大きく動き出す。
6話
2003年、検事の江陽(ジアン・ヤン)は、侯貴平(ホウ・グイピン)事件の再捜査を決意する。彼の覚悟を知った刑事の朱偉(ジュー・ウェイ)が協力者となり、二人は事件の鍵を握る人物への聞き込みを開始する。そこで事件の核心に迫る重要な証言を得るが、予期せぬ妨害に遭ってしまう。一方、2010年の現代では、厳良(イェン・リャン)の捜査をあざ笑うかのように、街で不可解な連続爆発事件が発生。過去の冤罪事件と現在の奇妙な事件、二つの時間が徐々に交錯し、物語は新たな謎を提示する。
7話
現代の捜査では、厳良(イェン・リャン)が廃ビルの爆弾の仕組みに気づき、同時に新たな物証を発見する。それは、逮捕された張超(ジャン・チャオ)のアリバイを根底から揺るがす可能性を秘めていた。一方、過去の時代では、江陽(ジアン・ヤン)が追っていた事件の重要な証人が姿を消す。二人は、背後に巨大な組織が関与していることを確信。朱偉(ジュー・ウェイ)は黒幕に迫るため大胆な行動に出るが、強大な権力の壁に阻まれてしまう。二つの時代の捜査が、それぞれ重要な局面を迎え、物語はさらに複雑に絡み合っていく。
8話
ジャン・ヤンとジュー・ウェイは、事件の真相を知る重要人物ホアンマオの身柄を確保する。彼の証言から、ホウ・グイピン殺害の動機がついに明らかになった。二人はこの証言を武器に、事件の再捜査を本格化させようとする。だが、巨大な権力を持つ敵の妨害は執拗だった。警察内部の協力者を使った巧妙な罠にかかり、ジュー・ウェイは停職処分に追い込まれてしまう。恋人とも別れ、孤立を深めるジャン・ヤン。そんな彼に、ホウ・グイピンが残した最後の証拠の在処を示す手がかりがもたらされる。
9話
3年の時を経て、朱偉(ジュー・ウェイ)と陳明章(チェン・ミンジャン)のもとへ帰ってくる。彼らは再会を喜び、止まっていた侯貴平(ホウ・グイピン)事件の捜査を再開することを誓う。やがて、あるチンピラの証言から事件は急展開を迎え、江陽たちはついに重要な手がかりを掴む。しかし、その光をかき消すように、巨大な権力と悪意が彼らの前に立ちはだかる。一方、現在の時間軸では、厳良(イェン・リャン)率いる特捜班が地下鉄の事件と巨大企業カーン・グループとの繋がりを突き止めていく。新たな匿名の通報が、捜査をさらに複雑な方向へと導いていく。
10話
過去のパートでは、江陽(ジアン・ヤン)をさらなる悲劇が襲う。ようやく掴んだと思われた手がかりは金によって消え、信頼していた仲間も彼の元を去る。孤立無援の中、彼は卑劣な罠にはめられ、検事としてのキャリアも誇りもすべてを失ってしまう。出所後、ささやかな日常を取り戻そうとした矢先、彼は自身の体に起きた異変と向き合うことに。一方、現代パートでは、厳良(イェン・リャン)の鋭い捜査が地下鉄爆破事件の巧妙なトリックを暴き始める。計画の実行犯が明らかになる中、事件の裏に隠された新たな謎が浮かび上がる。
11話
江潭市は爆破予告の脅威に揺れていた。警察は犯人グループに翻弄され、捜査は難航する。厳良(イェン・リャン)は独自の推理で犯人の狙いを追い、ついに事件の首謀者と目される男のアジトを突き止める。男は平康の白雪と呼ばれた元刑事、朱偉(ジュー・ウェイ)だった。二人の刑事の対峙は、10年間闇に葬られてきた事件の真相を白日の下に晒すきっかけとなる。朱偉の口から語られるのは、警察を欺いた巧妙な計画の全貌と、事件の裏に隠された巨大な悪の存在だった。
12話(最終回)
10年前の事件の最後の証人が、ついに公の場で口を開く。彼女の衝撃的な告白は、事件の根幹を揺るがすものだった。一方、過去のパートでは、あらゆる手を尽くしても真実にたどり着けない江陽(ジアン・ヤン)が、仲間たちに驚くべき計画を打ち明ける。それは、自らの命を賭けて正義を貫くための、あまりにも壮絶な最終手段だった。現在と過去、二つの時間が交錯し、物語は息をのむほどのクライマックスへと突き進む。すべての謎が解け、魂を揺さぶる結末が待っている。
ロング・ナイト 沈黙的真相 最終回 第12話あらすじネタバレ
キャスト、登場人物

厳良(イェン・リャン)
廖凡(リャオ・ファン)

江陽(ジャン・ヤン)
白宇(バイ・ユー)

朱偉(ジュ・ウェイ)
趙陽(チャオ・ヤン)

李靜(リー・ジン)
譚卓(タン・ジュオ)

