軍営に潜む幻覚の罠と、冷月(レイ・ゲツ)が知る祖父の余命
西南節度使の軍営で相次ぐ「悪霊殺人」の捜査を進める安郡王・蕭瑾瑜(しょう・きんゆ)たち。
しかし、医所に潜入していた大理寺少卿・景翊(ケイ・ヨク)が突如として発狂し、刀を振り回す異常事態が発生します。
楚楚(ソ・ソ)の解剖と冷月(レイ・ゲツ)の薬草の知識が、軍を恐怖に陥れた「幻覚」の正体を暴く中、長安では大太監・秦欒に謎の脅迫状が届く緊迫の第28話です。
第28話 詳細解説:発狂した景翊(ケイ・ヨク)と「活死人」の検視
軍の不審な動きと冷月の潜入
蕭瑾璃(しょう・きんり)(しょう・きんり)は、軍中からの外出者の名簿に不可解な点を発見し、蕭瑾瑜(しょう・きんゆ)に報告します。
さらに彼が軍営を離れていた期間に、以前収容された数名の「賊匪(山賊)」が脱走していました。この賊匪たちは皆、侯斌(こうひん)副将の麾下で訓練を受けており、その期間はわずか4ヶ月に満たない短いものでした。この不自然な兵士の出入りは、軍内部で何らかの秘密工作が行われていることを強く示唆しています。
一方、冷月は祖父である冷沛山大将軍が不在の隙を突き、彼の天幕に潜入。箱の中に隠されていた書状を見つけ出します。
そこへ冷沛山が帰還し、曲者と勘違いして剣を抜きますが、相手が孫娘だと気づき即座に剣を収めました。冷月は一瞥もくれずに天幕を後にし、手に入れた書状をそのまま蕭瑾瑜に手渡します。
長安の駆け引き:如意の脅迫状と秦欒の焦燥
長安では、景閣老が秦欒による「双子出産事件」の秘密調査の動きを察知し、監視を強めていました。
一方、大内総管への昇進を控えた秦欒の寿誕(誕生日)が近づき、骨董店の博古齋から一柄の「銅如意(縁起物の飾り)」が贈られてきます。
しかし秦欒がその如意の裏面を見ると、そこには本来あるべき詩句が欠落していました。
秦欒は即座に、これは許如帰を確保している謎の第三勢力(薛汝成)からの暗号であり、許如帰を引き渡してほしければ秦欒自らが赴かなければならないという脅迫状であると察知します。
楚楚(ソ・ソ)の解剖所見と景翊の発狂
夜の闇に紛れ、蕭瑾瑜と景翊は密会を果たします。景翊の報告によれば、「悪霊(邪祟)」の噂は、最初に医所の兵士が発狂したことから始まりました。蕭瑾瑜は軍需物資を管理する文官・呉琛(ごちん)に疑惑の目を向けます。
一方、楚楚が行った三名の死亡兵士の剖検(解剖)結果は、想像を絶するものでした。
楚楚の報告によれば、兵士たちは死ぬ直前、まるで「活死人(生ける屍)」のような状態に陥っていたといいます。呼吸はしているものの、身体の痛覚が完全に麻痺しており、そのため火に焼かれたり溺れたりしても、もがくことなく死に至ったのです。
この説明を聞いて恐怖で身震いする楚楚。蕭瑾瑜は彼女を気遣い、自分の天幕で休ませようとしますが、楚楚は彼に寄り添って共に徹夜で事件の調査を続けることを選びます。
その時、突如として景翊が狂乱状態に陥りました。
彼は強烈な幻覚に支配され、「兵士たちが冷月を連れ去ろうとしている!」と叫びながら、周囲に向かって刀を無差別に振り回し始めます。
間一髪のところで蕭瑾璃(しょう・きんり)が彼を気絶させ、冷月が素早く鍼を打って治療を施しました。
目覚めた景翊は、自分が発狂していた間の記憶を完全に失っていました。それは死亡した兵士たちの症状と全く同じです。
そこへ冷沛山大将軍が状況確認に訪れますが、楚楚の機転による暗黙のサインと、蕭瑾璃の巧みな誤魔化しにより、景翊の正体と発狂の事実は隠し通されました。
景翊が発狂直前の状況を振り返ると、副将の侯斌が医所へ食事を運んできた際、その視線が非常に奇妙だったことを思い出します。しかし景翊は警戒を怠らず、医所での飲食はすべてすり替えていたはずでした。
胡茄花の毒と、祖父・冷沛山の余命
景翊の症状と、蕭瑾瑜が持っていた傷薬(瘡毒の薬)を見た冷月は、ある植物の存在を思い出します。
それは「胡茄花(コナスビ)」という高価な鎮痛薬でした。しかしこの植物は全草に毒があり、特にその種子(籽)には微かな甘みを持つ劇毒が含まれています。種子の量によっては強烈な幻覚作用を引き起こすのです。
冷月はかつて嶺南の山中で、この胡茄花を他の薬に混ぜ、「五石散(強力な麻薬)」のような効果を生み出しているのを見たことがありました。これにより、「悪霊」の正体が胡茄花を用いた毒物犯罪であることがほぼ確定します。
深夜、冷月は盗み出した書状をこっそりと祖父の箱に戻そうとしますが、冷沛山に見つかってしまいます。
しかしこの対峙をきっかけに、冷沛山から「甘露の変」の真実と、彼が長年抱えてきた苦悩を打ち明けられます。
冷月はついに祖父の冷酷さが誤解であったことを悟りました。さらに彼女が祖父の脈を診たところ、彼が重度の骨病(旧疾)を患っており、すでに命の灯火が消えかかっているという残酷な事実を知ることになります。
考察と解説:胡茄花の幻覚トリックと工作員「侯斌」の怪しさ
今回、法医学と薬草の知識が融合し、「悪霊殺人」の物理的トリックが見事に解明されました。
痛覚を麻痺させ、強烈な幻覚を見せる「胡茄花」の毒。景翊が「冷月が連れ去られる」という幻覚を見たのは、彼の深層心理にある彼女への強い庇護欲と愛情が、毒によって暴走させられた結果と言えます。
また、景翊が食事をすり替えていたにも関わらず毒に当たったということは、毒は口から摂取したのではなく、「香炉の煙」や「傷薬への塗布」、あるいは「水蒸気」など、別の経路で体内に取り込まれたと推測できます。
そして、非常に怪しい動きを見せている副将の侯斌。
彼の下で訓練を受けた「賊匪」が脱走していること。そして景翊に奇妙な視線を向けていたこと。
第26話で考察した通り、昌王(薛汝成)が冷沛山の軍事力を内部から崩壊させるため、侯斌を工作員として抱き込み、胡茄花の毒を使って軍を混乱させている(あるいは兵士を洗脳して私兵化している)可能性が極めて高くなりました。
感想と次回の見どころ
ついに景翊が発狂するというピンチが訪れましたが、彼が見た幻覚が「冷月が連れ去られる!」だったところに、景翊の冷月に対する深い愛が溢れていて最高に萌えました。
冷月もまた、祖父の本当の想いと短い余命を知り、反発していた彼女の心境に大きな変化が訪れます。
長安では、秦欒が昌王(薛汝成)からの脅迫状を受け取り、二つの巨悪がいよいよ直接対決の火花を散らし始めました。
次回、蕭瑾瑜と楚楚は胡茄花の毒の「摂取ルート」をどのように特定するのか。
そして余命わずかな冷沛山大将軍が抱える西南軍の闇と、工作員・侯斌の正体が暴かれる謎解きの行方から目が離せません!
つづく


