軍営の「悪霊殺人」に挑む三法司と、長安で炸裂する秦欒の毒計

薛汝成(昌王)の自作自演によって許如帰が強奪された事件を受け、長安では大太監・秦欒が「第三の勢力」の存在に危機感を募らせます。

一方、西南の軍営へと足を踏み入れた安郡王・蕭瑾瑜(しょう・きんゆ)と楚楚(ソ・ソ)たち。景翊(ケイ・ヨク)が身を挺した偽装工作で医所へ潜入し、不可解な連続怪死事件の法医学捜査が始まります。

しかし長安では、秦欒がついに蕭家兄弟の出生の秘密を握る証人を確保。「乱党の遺児を抱養(養子に)した」という致命的な疑惑が蕭家を絶滅の危機へと追い詰める、息もつかせぬ第27話です。

第27話 詳細解説:決死の軍営潜入と、長安の「すり替え」の罠

薛汝成の負傷と秦欒の冷酷な検分

許如帰を護送中の囚車が襲撃され、薛汝成が負傷したという一報は、長安の朝廷を震撼させました。周翰(しゅうかん)率いる神策軍の仕業ではないと知った秦欒は、孫明徳(そんめいとく)に許如帰の行方を血眼になって捜すよう命じます。

周翰は骨董店「博古齋」の捜索で成果を上げられなかったものの、独自の網を広げ、かつて西平公主府に仕えていた「侍女」と「乳母」という二人の最重要参考人を捕らえ、長安へと護送していました。

この報告にひとまず満足した秦欒は、孫明徳を連れて薛汝成の屋敷へ「お見舞い」と称した探りに入ります。秦欒は薛汝成の言葉の真偽を確かめるため、あえて彼の負傷した腕を冷酷に強く掴みました。包帯の下の傷口が再び裂け、鮮血が滲み出します。

激痛に耐え、完璧に被害者を演じきって秦欒を退散させた薛汝成。しかしその瞳は凍りついていました。彼は「大位(皇位)に就いた暁には、必ずやこの者を八つ裂きにして除いてやる」と、闇の中で漆黒の殺意を燃え上がらせます。

楚楚(ソ・ソ)の知恵が光る偽装痕と、景翊(ケイ・ヨク)の医所潜入

黔州の西南節度使の軍営では、大理寺少卿の景翊が「傷病兵」に化けて内部を探る作戦が進行していました。

楚楚は民間の知恵(土方)を駆使し、景翊の体に見事な偽装を施します。柳の樹皮を小腿(すね)に貼り付けて火で煽ることで、消えない生々しい「瘀傷(打撲の青あざ)」を偽造。さらに巴豆(ハズ・下剤や皮膚の炎症を起こす薬草)をすり潰して塗ることで、並の大医(医者)では絶対に見破れない、皮膚に定着した傷痕を作り上げました。

景翊はリアリティを出すために自ら腕を擦りむき、徹底的な「負傷兵」となって蕭瑾璃(しょう・きんり)(しょう・きんり)の部隊へと合流します。

蕭瑾璃(しょう・きんり)は軍規によって女子の立ち入りが厳しく制限されている軍営の状況を案じ、楚楚と冷月(レイ・ゲツ)(レイ・ゲツ)に警戒を促しながら、景翊の演技力に一抹の不安を抱いていました。

しかし、いざ大営に到着すると景翊は見事な怪我人ぶりを披露。蕭瑾璃が「黔州の道中で救った行き倒れの兵士」として処理したことで、疑われることなく軍の医所へと収容され、内偵を開始することに成功します。

三人の不可解な悲惨死と、冷沛山大将軍との確執

冷月(レイ・ゲツ)は祖父である冷沛山(れいはいさん)大将軍を前に、終始不満げな態度を隠そうとしません。しかし冷大将軍はそれを受け流し、蕭瑾瑜(しょう・きんゆ)らを丁重にもてなした上で、副将の侯斌(こうひん)に軍中の詳細を報告させます。

侯斌によれば、半ヶ月前から「悪霊(邪祟)」の噂が立ち始め、兵士たちが突然狂暴化する事件が多発していました。体質によって症状の重さは異なり、正気に戻った者は自分が何をしていたか全く覚えておらず、最悪の場合は発狂したまま自ら命を絶つといいます。

蕭瑾瑜は楚楚に冷月を伴わせ、自死したとされる三人の兵士の遺体を検視させようとします。しかし冷大将軍は「冷月は仵作(検視官)の身分を持たず、立ち入る資格はない」と一蹴。冷月が激しく反論しようとした瞬間、蕭瑾瑜が素早く間に入って宥め、祖父と孫の決定的な衝突を未然に防ぎました。

楚楚による検視の結果は、異常極まるものでした。三人の兵士の死因はそれぞれ「溺死」「焼死」「縊死(首吊り)」。「自ら死を選ぶのであれば、少しでも楽な方法を選ぶのが人間の心理のはず。なぜこれほど激しい苦痛を伴う方法で死を遂げたのか」という反意思的な行動に、蕭瑾瑜は強い違和感を覚えます。楚楚は、脳や体内の真の異変を突き止めるには「剖検(解剖)」が必要だと進言し、蕭瑾瑜は即座にその許可を出しました。

長安の暗闘:すり替えられた証人と、蕭家滅亡の引き金

長安では、西平公主が秦欒の「過去の奴婢の探索」を阻止するため、腹心の連翹(れんぎょう)を城門へ派遣し、周翰の護送車を待ち伏せさせていました。しかし、老猾な秦欒はすでに裏をかいており、連翹が接触した人物はすでに偽物にすり替えられた後でした。

本物の侍女と乳母を秘密裏に尋問した秦欒は、驚愕の事実を突き止めます。

西平公主が産んだとされる双子のうち、一人は西平公主の実子ではなく、「外部から秘密裏に抱養(引き取られた)された子供」だったのです。

秦欒の脳裏に、かつて甘露の変の裏で起きたもう一つの大事件が蘇ります。

当時、西平公主と極めて親交が深かった謀反の首謀者・陳瓔(ちんえい)の夫人。彼女は難産で死亡したと記録されていますが、もしその時、楚楚と同じように「棺生子(死後分娩の子)」が奇跡的に生き延びていたとしたら――。

西平公主が「乱党の遺児(陳瓔の息子)」を実の双子の弟(あるいは兄)と偽り、郡王の爵位を継がせて朝廷の中枢に潜伏させていた。

この事実が証明されれば、皇帝の逆鱗に触れ、蕭家は一網打尽(一挙に滅亡)になります。秦欒と孫明徳は、その子供が蕭瑾瑜と蕭瑾璃のどちらであるかを特定するため、さらなる血の調査を開始しました。

考察と解説:反ロジカルな死因と、宿命の「陳瓔の遺児」

今回、楚楚が指摘した兵士たちの「非常に苦痛を伴う自死の方法」は、法医学ミステリーとして極めて重要なポイントです。

人間は精神的に完全に狂乱しているか、あるいは「何者かによって特定の幻覚を見せられている」状態でなければ、自ら火に飛び込んだり、のたうち回るような溺死を選びません。

第25話で李璋が発狂した症状や、黔州特有の毒薬「草頭烏」などのタイムラインを鑑みると、軍の食事や水源に、特定の神経や脳を破壊し、激しい恐怖の幻覚を引き起こす特殊な薬物が混入されている可能性が極めて濃厚です。

そして、長安で秦欒が掴んだ「双子の片方は陳瓔の息子」という衝撃の疑惑。

これまで、楚楚が「双子なのに骨格が全く似ていない(第15話)」と驚き、蕭瑾璃が「弟を救って以来、罪悪感から爵位を譲りたがっている(第10話、第20話)」という伏線が、この秦欒のセリフによって一気に一本の線に繋がりました。

もし蕭瑾瑜(しょう・きんゆ)が、かつて蕭恒が命懸けで守ろうとした剣南節度使・陳瓔の本当の息子であるならば、彼は「親の仇(秦欒)」の監視下で、皮肉にも三法司の長(安郡王)として育てられていたことになります。この出生の秘密は、昌王(薛汝成)が現在の皇室を転覆させるための強力な大義名分としても利用される危険性があります。

感想と次回の見どころ

景翊の体に青あざを作るために柳の皮を焼いて巴豆を塗る楚楚の本格的な法医学の知恵が痛快であると同時に、体を張って痛みに耐える景翊の男気(と、それを本気で心配する冷月の視線)にニヤリとさせられます。

しかし物語の緊迫感は最高潮です。薛汝成が秦欒への殺意を剥き出しにし、長安では蕭家を根絶やしにするための「出生の秘密」のカードが秦欒の手に渡ってしまいました。

次回、軍営で行われる兵士たちの解剖(剖検)から、楚楚はどのような薬物やトリックの痕跡を発見するのか。

そして医所に潜入した景翊が掴む、軍営内部に潜む昌王の工作員の正体とは。

長安の身辺調査と西南の軍営ミステリーがシンクロして加速する、怒涛の展開から目が離せません!

つづく