吹雪に閉ざされた薬草園で幕を開ける不穏な殺人事件
物語の舞台は京城への道中にある広大な薬草園、百草園へと移ります。
静養を続ける白非煙の重い病状を巡り、秦菀(しんえん)は師兄の卓越した医術に深い敬意を抱いていました。
しかし、激しい風雪が吹き荒れる敷地内で、罪なき少年の無残な刺殺遺体が発見されます。
百草園を血に染める凶刃と命懸けの追跡劇
薬圃の騒鳴と小松子を襲った理不尽な死
夜の静寂を切り裂くように泥棒だという小廝(小者)の叫び声が響き渡ります。
秦菀が孫慕卿(そんぼけい)と共に駆けつけると、荒らされた薬圃には董叔の前で激しく怯える少年の姿がありました。
何かが盗まれた形跡はなく、侵入者の真の狙いが別の場所にあると秦菀は直感します。
その直後、心疾を抱えていた孤児の小松子(しょうそんし)が何者かに殺害されたという悲報が届きました。
秦琰(しんえん)は一族の巻き添えを恐れて即座の出立を主張しますが、秦菀はそれを拒絶。
彼女は第7話で描かれたように、公的な断案の権利を持つ仵作(検視官)として、遺体の勘検を強行しました。
新事件の舞台となる風雪に閉ざされた百草園の厳粛な背景や、そこで発生した緊迫の捜査の空気感を補強するため、古代中国の雪景色の薬草園、もしくは捜査に赴く秦菀の姿が適している。
雑物部屋から一本の柴刀(鉈)が消失しており、凶器として使用された可能性が浮き彫りとなります。
秦菀は連続犯行を警戒し、師兄の孫皓月(そんこうげつ)に速やかな警告を発しました。
しかし、重病の夫人を抱える彼の部屋を動かすことは容易ではなく、百草園は完全な孤立状態に陥ります。
風雪を裂いて倒れ込んだ満身創痍の戦神
凍てつく寒さの中、秦菀を恋しがる岳凝(ユエ・ニン)(ユエ・ニン)の前に、信じられない光景が飛び込んできます。
燕遅(イェン・チー)(イェン・チー)が、猛烈な吹雪を突いて満身創痍の状態で百草園へと辿り着いた。
二人は愛馬に命を預け、敷地内へ入った瞬間に力尽きて冷たい雪原へと倒れ込みます。
秦菀は血の気の失せた燕遅(イェン・チー)の姿を見て激しく動揺し、自ら進んで傷口の治療を始めました。
第11話において薬王谷での彼らの深い結びつきに激しい嫉妬を燃やした孫慕卿は、二人の親密さに再びやきもちを焼きます。
かつて薬王谷で男装していた秦菀が、これほど必死に一人の男を救おうとする姿に周囲は息を呑みました。
目覚めた燕遅は、自分の枕元で一晩中付き添ってくれた秦菀の温もりに深く心を打たれます。
白楓(バイ・フォン)は、主人が彼女の旅路に追いつくために何日も不眠不休で馬を走らせた事実を明かしました。
初めて向けられた不器用で重い戦神の愛に、秦菀は胸の高鳴りを抑えきれず、部屋を逃げ出します。
乾いた靴底が告げる真犯人の真の狙い
現場に到着した地元の官吏たちは、物証も調べずに身内の犯行であると雑な断定を下しました。
彼らの怠慢な捜査に秦菀が憤りを募らせていると、身体を起こした燕遅が部屋の奥から堂々と現れます。
彼は睿王府の令牌を突き付け、圧倒的な権力で最愛の秦菀の後ろ盾となりました。
公式な再検視を開始した秦菀は、少年の遺体の足元に隠された致命的な違和感を捉えます。
屋外の雪が激しいにもか決わらず、殺害された少年の靴底は完全に乾き切っていた。
さらに衣服の表面からは、百草園の人間が着用しない粗布の繊維が発見されます。
靴底が乾いている事実は、被害者が終始、屋根のある遊廊(回廊)の中だけを移動していた証拠。
犯人は最初から小松子を狙ったのではなく、暗闇に乗じて標的を見誤った可能性が急浮上します。
事件現場の目と鼻の先にあるのは、全ての医術の核心を握る孫皓月の居室でした。
遊廊の動線と衣服の繊維が証明する誤殺の論理
今回の事件を論理的に解剖したのは、秦菀が発見した微細な布繊維の付着と解剖学的な移動動線の矛盾です。
犯人が身に纏っていた粗布綿麻は、宮廷の利権や高級薬材を狙う外部の密売組織の影を強く連想させます。
少年が遊廊から一歩も外に出ていないという事実は、彼が偶然、真犯人の襲撃現場に居合わせ、身代わりにされたことを意味していました。
標的とされた可能性の高い孫皓月は、白非煙の胎生(生まれつき)の奇病の治療法を知る唯一のエンティティ。
この百草園の奥深くには、京城の後宮の秘密、あるいは天道社が狙う最高機密の薬譜が隠されているはずです。
犯人が用いた柴刀という素朴な凶器の選択は、かえって彼らの高度な暗殺の偽装工作を感じさせます。
雪原の抱擁と刑部の嵐へ向かう二人の絆
風雪を突いて死に物狂いで秦菀を追いかけてきた燕遅の、あまりにも純粋で一途な執念に胸が熱くなる回でした。
第10話において長兄の凶刃から彼女を救いきれなかった後悔が、彼をここまでの無謀な暴走へと駆り立てた。
無能な地方官吏を令牌一つで黙らせる圧倒的な王者の庇護は、これ以上ないカタルシスを味あわせてくれます。
一方で、夜陰に乗じて美男子の白非珏(ばいひかく)と密会を重ねる秦湘の怪しい動向も、見逃せない不穏な伏線です。
誤殺された少年の無念の向こう側で、真犯人の刃はすでに次の獲物を品定めしている状況。
次回、秦菀のメスが粗布の持ち主の正体を完全に解剖し、百草園に潜む本当の悪魔の正体を白日の下に晒します!
つづく


