嵐のあとの静けさと、長安を揺るがす神獣の影

成佛寺を舞台にした凄惨な怪異事件が解決し、長安には一時の平穏が訪れたかに見えました。

しかし、事件の傷跡を消し去るために天子と長公主が成佛寺へ行香に訪れたことで、朝廷の権力バランスは微妙な変化を見せ始めます。

そんな中、雍州長史の杜銘がもたらした神獣・白澤(はくたく)が現世に現れたという奇妙な報告が、一行を次なる怪異の深淵へと誘います。

権力の頂点による邂逅と、夜の白澤廟を襲う怪異

盧凌風(ルー・リンフォン)の無欲な直言と成佛寺での姑侄の再会

天子は、かつて韋氏の乱を平定した唐隆の功臣たちを労う宴を開き、大将軍の陸仝に加増のリストを作らせます。

陸仝(リク・トウ)は密かに盧凌風(ルー・リンフォン)を呼び、この好機に金吾衛の職に復帰するよう勧めました。

しかし、盧凌風は自身の栄達を断り、民心を安定させるために天子自ら成佛寺へ行幸するよう直言します。

【成佛寺での権力接近】

天子の行幸(盧凌風の直言) ──┐

├─ 姑侄(おば・甥)の和解ムード

長公主の行香(蘇無名(スー・ウーミン)の進言) ──┘

一方、蘇無名(スー・ウーミン)もその巧みな弁舌で長公主を動かし、成佛寺への参拝を承諾させていました。

三日後、成佛寺の大仏殿で鉢合わせた天子と長公主は、図らずも姑侄(おばと甥)としての和睦の時間を過ごします。

長公主が天后手織りの七彩仏衣を寺に寄進し、消えた金簡を再び嵩山へ奉納すると宣言したことで、朝廷の緊張は一時的に緩和されました。

秦孝白に酷似した謎の僧空了の涙

数日後、七彩仏衣を拝むために大勢の信者が成佛寺へ押し寄せる中、裴喜君(ペイ・シージュン)(ペイ・シージュン)と櫻桃はある男に目を留めます。

その容貌は、かつて長安を騒がせた天才画師・秦孝白(しん・こうはく)に生き写しでした。

しかし男は自らを空了(くうりょう)と名乗り、2年以上の歳月をかけて歩いて長安へやってきた僧侶だと語ります。

広笑方丈の許しを得て寺に掛単(滞在)することになった空了は、一人大仏殿に残り、壁画を見つめて涙を流しました。

夜、喜君から空了の話を聞いた盧凌風は不機嫌になり、世の中に蘇無名のような男が二人といないように、ただの他人の空似だと一蹴します。

それよりも盧凌風の頭を悩ませていたのは、長史の杜銘が言い出した不条理な白澤現世の報告についてでした。

頑なな司法参軍と、裴喜君(ペイ・シージュン)が教えた官場の円融

白澤などという神獣が、この世に存在するはずがない!

盧凌風は、ただの伝説を信じて天子に上奏しようとする杜銘と激しく対立し、さらに蘇無名がその上奏に賛同したことに憤慨していました。

喜君はそんな恋人の手を優しく握り、彼の真っ直ぐすぎる正義感を官場(役人社会)では円融(柔軟さ)が必要だと諭します。

白澤という瑞祥(良い兆し)は、今まさに天子が求めている政治的パフォーマンスであり、蘇無名はその意図を組んだのだと説明しました。

その頃、長安の郊外にある白澤廟に二人の賊が押し入り、管理人の老夫婦を脅していました。

老翁が女妖を返り討ちにした男の怪談を語り、賊が不快感を露わにしたその時、廟の前に不気味な異音が響き渡ります。

夫婦が自らを白澤山人と名乗った瞬間、神霊の怒りに触れたかのように、二人の賊は跡形もなく消滅してしまいました。

【白澤廟の怪異】

侵入した二人の賊 ── 謎の異音と発光 ── 身体が消滅(死体すら残らず)

自称白澤山人の老夫婦

朝廷を動かす神獣の噂と、六人の新たな旅立ち

翌朝、杜銘の報告と蘇無名の墨付きを得た天子は、明君の治世の証として白澤の出現を大いに喜びます。

天子は自ら山へ入ろうとしますが、右目を失明している陸仝の制止を受け、捜査を雍州府へと命じました。

杜銘から即日入山を命じられた盧凌風は拒絶しますが、夜、庭で剣を舞って鬱憤を晴らしたのち、喜君の説得で同行を決めます。

翌朝、盧凌風、蘇無名、裴喜君、褚櫻桃(チュ・インタオ)、費鶏師(フェイ・ジーシー)、薛環(シュエ・ホァン)のお馴染みの六人が再び旅装を整えました。

杜銘が案内人として連れてきたのは、実際に山の中で白澤を目撃したという若き猟師の霊吉(れい・きつ)です。

深山幽谷に潜むという伝説の神獣の正体を突き止めるため、一行は霧深い山の中へと足を踏み入れるのでした。

唐隆の功臣と神獣白澤が持つ政治的プロパガンダ

韋氏の乱と唐隆政変のコールバック

冒頭で天子が韋氏を誅し、悖逆を平定した功臣を労うシーンは、本作の歴史的背景を補強する重要な要素です。

これは第1話第5話でも語られた、天子と長公主が協力して朝廷を掌握した唐隆政変(710年)を指しています。

当時、行動を共にした陸仝が盧凌風に金吾衛への復帰を促したのは、武力闘争の時代を知る彼なりの親心でした。

なぜ蘇無名は白澤の上奏に賛同したのか

理屈を重んじる盧凌風に対し、蘇無名が杜銘の上奏に便乗したのは、師である狄仁傑譲りの老獪な政治手腕です。

第5話のクーデターによって太上皇が退位し、天子と長公主の間には未だ一触即発の緊張感が漂っています。

この時期に聖君の世に現れるとされる白澤の噂を認めることは、天子の権力の正当性を補強し、民心を安定させるための最も安価な外交手段でした。

それを理解していたからこそ、喜君は盧凌風に官場の円融を説き、事件の裏にある本質を見極めようとしたのです。

新たなバディの成長と、背筋が凍る神隠しの怪異

前朝の怨念が渦巻いた成佛寺案が美しい大団円を迎え、休む間もなく始まった新章白澤現世に興奮が止まりません

特に、頑固な盧凌風を優しく諭す喜君の聡明さと、それに納得して庭で剣を振り回す盧凌風のお茶目な姿のギャップが最高でした。

秦孝白にそっくりな僧・空了の登場や、賊が跡形もなく消え去った白澤廟の怪異など、今回も謎の散りばめ方が秀逸です。

次回、猟師の霊吉に導かれて一行が向かう深山には、一体どのような罠が待ち受けているのでしょうか。

人間の仕業とは思えない死体なき消滅のトリックと、白澤山人を名乗る老夫婦の真の目的が気になります。

長安を離れ、自然の魔宮へと舞台を移した二人の名探偵の新たな謎解きから、一瞬たりとも目が離せません。

つづく